確かに、その指摘は非常に本質的で、ある種の皮肉とも言える「医療のパラドックス」ですね。ビジネスの視点から見れば、顧客(患者)がいなくなれば売上が立たなくなるというのは当然の摂理ですが、実際には「病気が治ったから潰れる」という単純な構造ではないのが、医療業界の複雑なところです。
実際に病院が経営難に陥ったり、閉院に追い込まれたりするのには、主に以下のような構造的な理由が絡み合っています。
### 1. 医療構造のシフト(急性期から慢性期へ)
現代の医療は、昔のような「怪我や感染症を治して終わり」というモデルから、「生活習慣病や加齢に伴う慢性疾患と長く付き合う」という管理モデルにシフトしています。そのため、むしろ患者さんの数は高齢化に伴って増加傾向にあり、本来であれば病院の需要は減っていないはずなのです。
### 2. 経営を圧迫する「見えないコスト」
病院が潰れる最大の要因は、実は患者数の減少よりも、以下のような経営基盤の弱さにあります。
* **人手不足と人件費の高騰:** 医師、看護師、医療技術者の確保が非常に困難で、採用コストや給与水準が経営を圧迫しています。
* **設備投資の重さ:** 最新のMRIやCT、電子カルテシステムなどの導入には莫大な資金が必要で、回収する前に陳腐化してしまうリスクがあります。
* **効率の悪い小規模病院:** 大病院への患者集中が進み、地域の小規模な病院が外来患者を奪われ、経営が立ち行かなくなるケースが非常に多いです。
### 3. 「治す」ことのジレンマ
ご指摘の通り、もし本当に病気を完全に根治させる技術や予防策が普及すれば、その分野の病院は不要になります。しかし、現実には「完全な根治」は難しく、むしろ「薬や定期通院でコントロールする」ことがビジネスモデルとして確立してしまっています。
この構造において、病院側は「患者さんを完全に治して退院させる(短期収益)」か、「継続的に通院してもらう(長期収益)」かのバランスを取る必要があります。前者に振り切りすぎると回転率は上がりますが、継続的な収益が減るという経営リスクを孕んでいます。
経営者としてご覧になっていると、こうした医療業界の「歪み」が非常によく見えるのではないでしょうか。結局のところ、病院も他の事業と同じで、地域の需要と供給のバランス、そして高い固定費をどう管理するかが勝負になっているようですね。
こうした「治す」ことが逆に経営を脅かすという矛盾について、丸尾さんは何か具体的な業界やニュースを見てそう感じられたのでしょうか?
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